生産性設計
通知と注意コスト:コンテキストスイッチの負荷を設計する
要点
- 通知の一つひとつは小さく見えても、それが引き起こす文脈の切り替えは累積的に大きな負担となる。
- 中断からの回復に時間を要するとする研究は、通知の設計が生産性の設計そのものであることを示す。
- 対策は通知を一律に減らすことではなく、緊急性と重要性に応じて届け方を設計することにある。
通知は、現代の働き方に深く組み込まれている。メッセージ、更新、リマインダー。その一つひとつは些細に見えるが、絶えず届く通知は注意を分断し、累積的に大きなコストを生む。本稿では、通知を注意コストの観点から捉え、その届け方を設計する視点を検討する。
小さな通知の累積効果
個々の通知に応じる時間は、数秒から数十秒にすぎないように見える。しかし、通知が生むのはその応答時間だけではない。通知は進行中の作業から注意を引き剥がし、文脈の切り替えを強いる。この切り替えのたびに、それまで組み立てていた思考の流れが断たれる。
Mark らは「The Cost of Interrupted Work」(2008) で、中断された作業に戻るまでには相応の時間を要することを示した。この知見に照らせば、頻繁な通知は、応答そのものよりも、失われた集中の回復に多くのコストを課していることになる。集中の回復という論点は集中の設計で詳しく扱った。
枠があるほど通知は増える
Parkinson は1955年のエッセイで、仕事は与えられた時間を満たすように膨張すると論じた。この Parkinson の法則は、通知の設計にも示唆を与える。通知の経路が用意されているほど、そこを流れる情報は増えていく傾向がある。あらゆる更新が通知に値するという前提を問い直さなければ、通知の総量は際限なく膨らむ。
つまり、通知を減らすには、個々の通知を止めるだけでなく、何を通知に値する情報とみなすかという基準そのものを設計する必要がある。
届け方を設計する
通知への対策は、一律の削減ではなく、緊急性と重要性に応じた届け方の設計にある。次のような区別が出発点となる。
- 即座の対応を要する通知と、後でまとめて確認できる通知を分ける。
- まとめて確認できる情報は、随時ではなく定期的な要約として届ける。
- 各自が集中する時間帯には、緊急でない通知を保留する。
ただし、通知を絞りすぎると、必要な情報が届かず、連携に支障をきたす恐れがある。一方で、すべてを即時に通知すれば、注意は絶えず分断される。この均衡は、非同期コミュニケーションで論じた同期と非同期の配分と同じく、業務の性質に応じて調整されるべきものである。
注意という有限の資源
通知の設計は、注意という有限の資源をどう扱うかという問題に帰着する。通知を無制限に許せば、集中は絶えず切り刻まれ、深い作業の質は低下する。問われているのは、通知を敵視して遮断することではなく、緊急性と重要性に応じて情報の届け方を設計することである。自動化による通知の削減についてはワークフロー自動化の限界でも触れた。注意を守る設計は、生産性を守る設計にほかならない。

